企業防災とは?リスクを負う前に取り組むべき4つの対策を紹介
目次
日本は地震大国であり、いつ大きな震災が起きてもおかしくない状態です。
そのため、家庭でも企業でも災害を最小限に防ぐ対策が今後重要になってきます。
「企業防災についてよく分からない」
「企業防災の具体的な対策が知りたい」
防災対策についてどう対応していいか分からない企業も多いのではないでしょうか。
企業防災をせずに、大きな自然災害の被害を受けてしまうと、地域住民の生活だけでなく企業にも大きな支障が出てしまい、倒産のリスクを伴う可能性があります。
この記事では、大きな災害がきた際に従業員や顧客、取引先を守るために、以下の情報を解説します。
企業防災とは
企業防災の必要性・重要性
企業防災を行わないリスク
企業防災の具体的な対策
この記事を読んで企業防災を理解し、しっかり対策しておくと、万が一、大きな災害や事故が起きた場合に人命と会社を守れます。
企業防災について詳しく知りたいという方はぜひチェックして、災害に備えてください。
そもそも企業防災とは?
企業防災とは、災害が発生したときを想定して企業が行うべき対策です。
内閣府や中小企業庁も企業防災実施の徹底を呼びかけており、各企業が自主的に災害へ備えることが大切になってきます。
企業防災では、「防災」と「事業継続」2つの観点から対策が重要です。
防災と事業継続について
企業防災には、従業員や災害の被害を最小化する「防災」の観点からの対策と災害時の企業活動の維持、早期回復を目指す「事業継続」の観点からの対策があります。
防災と事業継続には以下のような違いがあります。
防災 | 事業継続 | |
目的 | 人命や財産の保護 | 重要な事業の継続 |
対象 | 自然災害 | 事業に影響を及ぼすあらゆる脅威 |
対策例 | 防災訓練 耐震補強 |
データのバックアップ 復旧手順のマニュアル化 |
「防災」は被害を回避・軽減のための事前準備を指します。一方で「事業継続」は被災時にどのようにして、事業を継続するのかといった事後の対応です。
防災の観点だけで対策をしてしまうと、緊急時の事業継続は難しいでしょう。
「防災」と「事業継続」の2つの観点での対策が必須です。
BCPとBCMとは
BCPとBCMは、企業が災害対策を考える上で欠かせません。
BCPとは、企業が災害時に業務継続のために必要な方針や手続き、手順などを決めておく計画です。平常時に取り組んでおくべき活動や実際に事業継続するための具体的な手段や方法を取り決めておきます。
BCMとは、災害や事故が起きたときに大切な業務を中断させない、やむを得ずに中断した場合でも、最小時間内に業務を復旧させるための管理方法です。BCPはBCMの一部だと言えます。
企業が事業継続するには、BCPとBCMをしっかり理解し、具体的な方法や全体の方針、計画を考える必要があります。
企業防災の必要性
企業防災が必要な理由として、企業には従業員や顧客の安全を第一に考える責任があります。
それと同時に、取引先や顧客に経済的損失を与えないようにする責任も負っています。
災害により大きな損害を受けてしまうと業務ができなくなり、取引先など関係者へサービスの提供ができません。
場合によっては、災害を受けてない地域の経済まで悪影響を与えてしまいます。さらに復旧ができない状態が続くと倒産の危機に陥る可能性も考えられます。
災害時に企業自体が停止してしまうと、被災地域はもちろん被害のない地域まで影響が出てしまい、取引先や顧客に損失を与えてしまうのです。
そのため、防災だけでなく事業継続の観点からの対策を2つ同時に行う必要があります。
法的責任も!企業防災の重要性
日本の企業には、労働契約法第1章第5条では「労働者の安全への配慮」が義務付けられています。
企業は従業員の安全確保が法律で定められており、防災対策は社会的責任ではなく、法的責任が生じます。
この法的責任は、自然災害時でも同様です。
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、自動車学校の教習生24人と職員1人が津波により犠牲となりました。
遺族らが安全への配慮に過失があったとして、自動車学校に対し責任が問われ、地方裁判所の第一審判決では企業に対する法的責任が認められたという判決も実際にあります。
とはいえ、安易に従業員を避難させれば事業継続が難しくなるので、両者のバランスを考えつつ企業防災について考えなければなりません。
防災対策が十分に出来てない企業は、できるだけ速やかに企業防災の体制を整えましょう。
企業防災対策の現状
内閣府や中小企業庁が企業防災を推進している中で、企業防災を実際に行っている企業の現状はどうなっているのでしょうか。
つづいて、企業の災害対策と自然災害による中小企業への影響を実際のアンケートをもとに紹介します。
6割の企業が震災対策は不十分
2012年1月に財団法人労務行政研究所が、「3.11大震災以降の職場と個人の実情に関するアンケート」を実施しました。
このアンケートによると、勤務先の災害対策が「十分である」と答えた割合はわずか4.1%、「ほぼ十分である」を合わせても全体の4割程度しかありません。
対して、「全く足りない」と答えた割合は28.0%、「やや足りない」の31.5%を合わせると6割が勤務先の災害対策の現状を不十分と評価しています。
大きな災害をもたらした東日本大震災の後でも、6割の企業が災害対策を十分に行っていない現状なのです。
損害額1,000万円以上!災害による影響とは
つづいては、中小企業庁が発表している「被災による中小企業への影響」についてのアンケート結果です。
被災によって被った物的損失額のアンケート結果によると、従業員の規模に関わらず、100万円以上の損害を受けた企業の割合が7割以上、1,000万円以上の損害を受けた企業の割合も3割を超えています。
つづいて、被災によって受けた損害内容のアンケート結果についてです。
「役員・従業員の出勤不可」と回答する企業は最も多く、「販売先・顧客の被災による売上の減少」「仕入れ先の被害による自社への原材料等の供給停止」の回答も一定割合を占めています。
自社の被害だけでなく、仕入れ先や顧客の被災が原因で、事業上の損害も数多く発生しています。
企業防災は、直接被災していない企業や地域にまで影響を及ばさないためにも、「防災」「事業継続」2つの観点から対策が必要です。
企業防災対策を4つのポイントで紹介
企業防災を対策するにあたり、どのように計画を進めるべきかを紹介します。
災害時に復旧が遅れると、企業の存続が難しくなるケースもありますので、日頃からの対策が重要です。
企業防災は、以下の4つのポイントに分けて考えると、防災対策が行いやすくなります。
生命の安全確保
事業継続
二次災害の防止
地域貢献・地域との共生
企業が行うべき防災対策を4つのポイントを軸に紹介します。
生命の安全確保
企業防災として第一に考えないといけない点は、従業員や取引先、顧客、近隣住民の安全確保となります。
災害規模に関わらず、従業員全員が人命優先の判断ができるよう教育の徹底が必要です。
「生命の安全確保」には以下のような対策があります。
定期的な防災訓練の実施
災害マニュアルの作成、配布
災害時の安否確認方法の共有(メールやアプリなど)
必要量の食料や医薬品、防災グッズを備蓄
ただ、備蓄用の食料の賞味期限の確認を怠ったり、非常用備品が準備されていても使い方が分からなかったりしては意味がありません。そのため、従業員への教育も必要となります。
他にも、ケガ人が出た場合や持病がある方にどういった対応が万全なのか、あらゆる場面を想定してさまざまな準備や対策を検討しましょう。
事業継続
災害発生後、可能な限り短時間での営業再開が事業継続の最大の目標です。
まず事業に多大なダメージを与える重大被害を想定し、最低限継続すべき業務を絞り込みます。
「事業継続」では以下のような対策が必要となります。
いつでも事業再開できるように常にデータのバックアップ体制
交代制の災害時シフトを組む
既存オフィスが使えないときのバックアップオフィスの確保
事業継続計画(BCP)の作成と周知、徹底
事業の継続では、災害で起こり得る長期的なビジネスへの影響や従業員、取引先への影響を予測します。
そして、業務機能の低下が引き起こすであろう社会的影響の予測をした上で、防災計画を立てましょう。
二次災害の防止
二次災害は、災害時のガス管の爆発や火災、建造物の崩壊による事故など、時には一次災害を上回る被害を出す可能性もあるため警戒が必要です。
「二次災害の防止」では以下の対策があります
出火防止や窓ガラスの飛散防止、看板の落下防止などの補強工事
企業のホームページなどで防災の取り組み内容を発信
上記のような防災対策を徹底すると、二次災害を最小限に食い止められます。
そして災害発生時のときは、生命の安全が確保できたら、その後すぐに二次災害の防止に行動に移せる計画をしましょう。
地域貢献・地域との共生
企業の職種や地域の特性により違いが出やすい部分ですが、地域社会に対して「自分の企業だからできること」を考えて計画を行います。
MEMOタイトル
都道府県と協定を結ぶ
一般市民に対して自社商品の無償提供
ヘリコプターの緊急着陸の場として敷地内を提供
被災後、ボランティア受け入れの宿泊施設を提供
食品店や飲料メーカーなどが被災時に一般市民対し、自社の商品を無償で提供したという報道をよく見たり聞いたりしませんか。
企業防災の一環として、あらかじめ従業員が非常時に自己判断で適切な行動が取れるように教育されていた結果だといわれています。
人命を左右する災害の中で、上司からの指示待ちでなく従業員ひとりひとりが的確な判断できるように教育すると、地域貢献にもつながります。
企業防災対策として活用できる2つの保険
きちんと企業防災を行われていても、大規模な災害により深刻な被害を受けてしまい、事業の復旧までに多大なコストが発生する恐れも考えられます。
そんな場合に備え、防災に関する保険への加入も防災対策のひとつの手段です。
被害を受けた事業の復旧コストがまかなえず、倒産へつながる可能性もあるため、復旧費用を保証してくれる保険の加入が重要となってきます。
火災保険と地震保険
防災対策で加入すべき保険として「火災保険」と「地震保険」をおすすめします。
火災保険とは、火災などで建物や家の財産に損害が生じた場合に補償してくれる損害保険です。
名前のイメージで火災による損害しか対象にならないと誤解されがちですが、火災のほかにも落雷や水害、風災などあらゆる災害も対象になっています。
つづいて、地震保険についてです。
火災保険ではカバーできない地震や津波、噴火が要因となる火災や損害を補償する損害保険です。
火災による被害を受けた場合でも、その火災が地震の原因となって発生したものであれば火災保険では補償されず、地震保険の補償となります。
そのため、火災保険+地震保険の加入がおすすめです。
事業者災害対策機構
火災や風災などで被災した場合に診断から修繕までをサポートしてくれる「一般社団法人 事業者災害対策機構」があります。
経験豊富な職員と施工業者が無料診断を行い、火災保険適用と判断されれば、保険会社へ申請します。その後、保険会社から保険適用内と通知があれば保険金の支払いがあるので、その保険金を使い、修繕工事を行うという流れです。
無料診断から保険会社への書類作成サポート、修繕工事まで実質0円で行ってくれます。
火災の被害だけでなくても、台風や水害などの被害にも対応しているので、万が一被害が大きくても企業を守れる対策のひとつです。
企業防災で命と会社を守ろう
企業防災は、従業員そして会社の命を守る大切な責任です。
あらゆる災害へ順次に対応するためには、企業ごとの事業内容や規模などを踏まえ対応策を考える必要があります。
従来の防災計画にほかの要素をプラスした対策が必須です。
普段から企業防災について考え準備しておくことで日常的に安心して働け、災害時でも適切な判断で行動できます。
いざというときにスムーズに動けるよう企業防災を徹底しましょう。