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【防災管理】消防計画とは何か?具体的にどう作成すればいいのか

企業がオフィスや倉庫などに入居するときには、消防計画を取りまとめる必要があります。この消防計画とは、それぞれの建物で火災などの「事故・災害」が発生しないように、そして万一それらが発生し場合でもその被害を最小限に食い止めることを目的として、建物や企業の状況によって定める計画のことです。

では、この消防計画を作成するには、どのようにすればよいのでしょうか。

消防計画作成のガイドライン

消防計画の概要を見ていきましょう。
そもそもは1948年(昭和23年)に施工された消防法によって、防火対象物に対する予防体制の基本方針として、「防火管理制度・防災管理制度」が設定されました。これは、火災・災害の発生を防止するとともに、被害を軽減するために、必要最小限度の義務を防火対象物の「所有者・管理者・占有者」などに課すもので、一定の資格を持つ防火管理者・防災管理者を選任し、管理権限をもつ者の指示のもとに消防計画を作成することを求めています。

また、防火・防災管理業務の内容は対象物ごとに異なることから、法令基準に基づき画一的に行うのではなく、個々の防火対象物ごとの防火・防災上の危険要因に合わせて作成した消防計画が必要となります。

消防計画の対象となる災害

消防計画の対象とする災害はどのようなものなのでしょうか。これは、防火管理業務の対象となる災害である「火災」「地震」「その他の災害」などとなっており、消防法第8条によって、火災の予防とその被害の軽減のために消防計画を定めて、この計画に基づき防火管理上必要な業務を実施することを求めています。

また、消防法第36条により、火災以外の災害のうち政令で定めるものについては、その被害の軽減のために特に必要のある建築物に地震への対応が定められるようになっています。これは、今後想定される南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下地震が発生した際に備えての法改正がきっかけです。

消防計画に関する手続きについて

ここからは、消防計画を作成するにあたり必要な手続きを見ていきましょう。

使用開始前における届出

管理者は、防火・防災管理制度を遵守するため、防火対象物の使用前に防火・防災管理者を選任すること。すぐに所轄消防長もしくは消防署長に届け出なければいけない。
また、防火・防災管理者は管理権限者の指示により、防火対象物の使用前に消防計画を作成し、所轄消防長もしくは消防署長に届け出なければいけない。

これらの届出は、使用開始後における「防火・防災管理者」の選任もしくは解任、消防計画の変更の際にも必要になりますので注意が必要です。防火対象物においては、管理権限が変更される際の手続きや、定期的な状況の「把握、計画」の見直しなどについての規程を整備しておくことが大きなポイントになります。

使用開始後の点検報告

防火対象物が多人数を収容し一定の用途がある場合は、火災の予防とその被害の軽減に関する専門的な知識を有する「防火対象物点検資格者」に、防火管理上必要な業務や消防用設備の設置状況などについて、定期点検を実施しその結果を消防長もしくは消防署長へ報告しなければいけない。これは消防法第8条2項で規定されている、防火対象物点検報告制度によるもの。

また、防災管理制度が義務付けられている防火対象物の管理権限者については、災害による被害の軽減に関する専門的な知識を有する「防災管理点検資格者」に、防災管理上必要な業務について、定期点検の実施とその結果を消防長もしくは消防署長へ報告をしなければいけません。これは消防法36条の防災管理点検報告制度によるものです。
この点検は1年に1回必ず行うもので、管理権限者による防火対象物の管理業務の消防法令への適合を確保し、点検対象事項が点検基準に適合している場合には、点検表示を行うことで、利用者へ防災対象物が基準に適合していることを知らせることになります。

また、これらの点検制度においては、3年間以上継続して消防法令の基準に適合していると判断された防火対象物については、3年間は定期点検報告義務が免除される認定を受けられます。また、その認定を受けた認定表示も可能になります。

消防機関の役割

消防機関は、防火・防災管理者の選任・解任の届出ほか、消防計画の届出、統括防火・防災管理者の選任・解任の届出などを受理するだけでなく、消防計画の作成にあたって指導・助言を行っている。

防火対象物点検報告制度・防災管理点検報告制度による点検結果の報告などにより防火・防災管理業務の実施状況を把握し、必要な指導を行うことも求められています。そして、火災予防上必要があるときには、立入検査や資料提出命令なども行うことができ、結果的に消防計画に適合していないと判断した場合には、措置命令などを出すことが可能です。

消防計画に記載する内容について

業者の女性

ここからは、具体的に消防計画に掲載する内容を見ていきましょう。消防計画は、防火・防災管理の基本方針ですので「避難・救助活動の訓練の実施」「消防用設備の点検・整備」「火気の使用・取扱いに関する監督」「避難・防火上必要な構造・設備の維持管理」「防災対象物の収容人員の管理」のような、防火・防災管理業務を行う上で必要な事柄を記載します。

防火・防災管理業務を定める

消防計画では、火災や大規模な地震などの予防と、被害の軽減を図るために必要な防火・防災管理業務について定めることが求められています。これらについては、防火対象物の位置や構造、設備の状況などを使用の実態に合わせて安全性が一定のレベルまで確保されることが目標です。

そして、人命の確保や二次災害の防止が十分にできるように、計画内容を定めていきましょう。また、市町村条例など地域特性に応じた防火・防災管理業務の実施が必要な場合は、それらに合わせた消防計画を作成します。

消防計画の作成単位

消防計画は管理権限の及ぶ範囲について作成します。

ひとつの防火対象物がその管理について複数の権限に分かれている場合もある場合は、個々の管理権限者単位で消防計画を作成し、防火・防災管理業務を実施することになります。つまり、選任された防火・防災管理者単位での消防計画の作成が必要です。

そして各防火・防災管理者が協議して、防火対象物全体に渡る共同の消防計画を定めることも必要です。その一方で、管理権限者が同じ複数の防火対象物が同一敷地内にあるという場合は、消防計画は敷地単位で作成することになります。
また、大規模・高層の防火対象物においては、該当する対象物だけでなく、関係のある防火対象物全体における「防火・防災」管理上必要な業務が適切に行われるように、それぞれの管理権限者の役割分担を明確にして、共通の認識に基づき消防計画を作成することになります。

加えて、自衛消防組織の存在も重要です。これは、自衛消防組織の設置対象となる部分である管理権限者が設置義務を負うことになり、管理権限者が複数いる場合は共同で自衛消防組織を置くことになります。
そして、火災などの災害は発生したときには、初期消火や避難誘導など自衛消防活動が防火対象物全体で効果的に実施されるような体制の構築が必要になるので、そのための具体的な内容を消防計画に記載することになります。

時間的な対応範囲

消防計画に基づく防火・防災管理業務においては、「平常時の予防的措置と災害時の応急的措置」の大きく分けて2種類の時間軸があります。いずれについても、人命の安全確保や二次災害の防止などの観点で行われるものですが、災害発生時の応急対策を実施する時間的範囲は「災害発生時点から」です。そして、その災害による生命・身体・財産の被害を軽減するための活動を行い、これ以上被害が拡大するおそれがなくなる時点が終了地点となります。

どのような災害が起こるかを想定して計画を作成する

消防計画においては、個々の防火対象物の状況に応じて防火・防災管理業務の実施を円滑に進めるために、それぞれの防火対象物における危険性を客観的に把握することで、確実に対応できる体制の整備が求められます。
この際、社会通念上の防火・防災に対する要求に合わせて消防計画を作成する必要があるため、一定の規模の地震が発生したことを想定し、これに伴う被害を評価することで「人命の安全確保や二次災害防止」のために必要な活動内容を整理できるでしょう。

そして、どのような内容の管理業務をするかによって、災害に対処するための「組織・人員・物資・機材」などを想定し、それらを確保するための方法を消防計画に盛り込んでいきます。また、防火対象物によっては毒性物質の発散などのリスクがあるものもあり、この場合の対応としては、その特殊性や人為的な要素が大きいので個別に災害の被害を想定することは困難です。
そのため、地震などの災害への対応を想定した計画を応用することで、その災害を乗り切るような体制を構築することになります。

消防計画の作成するときに想定すべき地震の規模はどれくらい?

では、消防計画の作成の際に想定すべき地震の規模は、どれくらいが良いのでしょうか。
これは、当該防火対象物がある地域における最大規模の地震を想定し、大は小を兼ねるではありませんが、その時々の被害に応じて対処していくことになります。

少なくとも震度6強程度の地震を想定し、地域防災計画における想定地震災害の規模(各自治体が発行しているハザードマップを参考にするのが良いでしょう)や、凍害防火対象物の耐震設計の考え方も考慮し、適切な強さの地震を想定することがポイントになります。また、震度6弱程度の余震が短時間に複数回発生することも想定しておくと、より実用的な消防計画が作成できるでしょう。

必要な対応行動の内容などの具体的な手法については、一律な方法に限定するのではなく、消防機関とも相談の上決定していくのが望ましいでしょう。また、想定される被害に応じた対応が不適切なものにならないように、客観的に見直すことも重要です。企業によっては、総務部を中心として「消防計画プロジェクト」を立ち上げて、第三者の客観的な判断ができるような体制で作成していくという方法もあります。

消防計画作成の一般的な手順


では具体的には、どのように消防計画を作成すればよいでしょうか。

防火対象物の状況を調査・分析する

防火対象物の利用・建物形態や設備などの状況を調査して特徴を分析します。この際、建物設計時の基本計画などを参考にするとよいでしょう。

被害態様を評価する

災害が発生した際のことを想定し、その被害態様の全体像を評価します。
具体的には建物などの基本的な「被害、建築設備などの被害、避難施設などの被害、ライフラインなどの被害」が該当し、建物構造や避難施設などが大きく被害を受ける可能性がある場合は、必要強度を確保するための工事など合理的な方法が、計画を作成する前提です。

防火・防災安全上の目標を設定する

防火対象物における防火・防災安全上の目標設定します。まずは、利用者の人命・身体安全の確保が第一目的となり、その後に二次災害の防止が必要です。これらの目標を達成するためには、避難を完了させる時間や被害の及ぶ範囲を最小限に食い止めるなどの指標が必要となり当然ですが、防火対象物の実情や災害状況に応じてその指標へ変化することがあります。

対応行動を具体化する

目標を達成するためには、対応行動を具体化することが必要です。これは、一定時間内に通報すること、初期対応の体制を整えること、一定規模の避難誘導体制をすぐに整えることなどが挙げられます。
これらをすぐに実施できるように、消防計画に盛り込むべき事項である「体制の構築方法」「具体的対応行動の実施計画の内容」を決定します。

また、大規模地震に対して必要となる応急対策を検討する際には、従来の体制構築だけでなく、さらに大規模な体制を構築する必要があることも念頭に置いて計画を作成する必要があります。

PDCAサイクルを採用し定期的に見直す

消防計画を作成した後も、被害の想定や必要な対応行動が十分かどうかを定期的に見直す必要があります。そのためには、定期的に訓練を実施し、十分な体制が整備されているかをチェックしましょう。そして、PDCAサイクルにより、常に最新の状態の消防計画に改善されるような仕組みを整える必要があります。

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